おくりびと

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私がおくりびと(納棺師)のすごいわざをじっくり見たの は、叔父の葬儀のときでした。目の前で、故人の肌を まったく見せず、まるでマジックショーのように手際よく 着替えさせたのには驚きました。 地方によってはお風呂に入れたり、むかしは遺族がお 酒でご遺体を清めたと聞いたことがあります。 納棺師が叔父を着替えさせたあと、遺族が死に装束を 付けていきます。その前に、私の長男と次男は逃走し、 三男だけが逃げ遅れ怖がって後ろに隠れていました。 一人ひとりが足元から足袋や脚絆、手甲などを付けて いき、残ったのは頭に付ける三角の布。納棺師が「ま だの方は?」と言うと、みんなの視線は三男に。 まわりに促され、三男は青くなりながらしぶしぶ出て きました。そして顔を見ないようにしながら、こわごわ 納棺師の指示に従っていました。 今回教訓を得た彼は、おばあちゃんの葬式の時には 率先して足袋を履かせていました。 叔父の葬儀は新聞の訃報に載りました。 よく、泥棒や詐欺師は訃報を見て留守の家や式場を 狙うというので「気をつけなくては」と言っていました。 叔父の家と私の実家は同じ敷地にあるので、念のた めに家の灯りとテレビを点け、セキュリティをかけて通 夜の会場に出かけました。 通夜のお清めの席に、親戚と名乗る男が現れました。 知らない顔でしたが、どうどうと飲んだり食ったりして いるので、遠い親戚かと思ってました。その人曰く「あ わてて来て香典を忘れたので、明日の葬儀に持って きます。」と・・・。 誰なのか、他の親戚に聞いたのですが、みんな知ら ないと言います。結局、その人は翌日の葬儀に来ま せんでした。何が目的だったのか・・・ その通夜の席上でもう一つの事件が。 携帯電話に警備会社から電話があり、「家に侵入者 がいます!」と言われてビックリ。出かける前に言っ ていたことが現実に・・・ しかし席を外すわけにもいかず、車で帰っても30分 はかかります。心配なのは、残してきた犬たち。 現場に駆けつけた警備保障の隊員から電話で話し を聞くと、ビクビク声で「灯りとテレビが点けっぱなし で、犬が吠えています」と・・・ それなら我々がしてきたことなので、心配ないと伝 えると彼もほっとした様子。こっちもひと安心でした。 原因は犬がいたずらして警報が鳴ったというお粗末。 話しは変わります。 昔のお葬式はたいてい自宅で行いました。ほとんど が和室でしたから、長時間正座をしていると足がしび れて立てなくなってしまいます。 私の曾祖母の葬式で、長時間のお経のあとにお焼香 に立った親戚が、足がもつれて倒れそうになり、柱に つかまった瞬間オナラが・・・ 悲しみにくれていたあちこちで、笑いをこらえているの がよくわかりました。でもさすがは僧侶、何事もなかっ たようにお経を読み続けていました。 父が病院で亡くなったときのこと。 始めての経験でどうしていいかわからない遺族に、病 院はすぐにドライアイスを用意しろとか、早く退院して くれとかいいます。そう言われても、夜中の3時にどう していいのかわかりません。 途方にくれていると、そこに現れたのが病院に出入り の葬儀社。親切な対応で、まるで救世主のようでした。 一番気になるのは費用ですが、「うちは〇〇万円で行 います。」といわれ、そんなに高額ではなかったのでお 願いすることにしました。 ところが、故人を家に連れて帰り細かい打ち合わせを 始めると、最初に提示した料金は基本料金で、祭壇・ お棺をはじめ、ほとんどのものが別料金。 しかも「安いお棺では故人が浮かばれない」とか「この の祭壇では恥ずかしい」とか言われ、値段をどんどん 吊り上げて、結局最初の4倍ぐらいになりました。 騙されたような気分でしたが、普通ではない精神状態 の上、葬儀という神聖な儀式の金額は言いにくいもの。 何十万も取られた祭壇を持って帰っちゃうのですから (置いていかれても困りますが)、最高に高いレンタル です。 その後にあった叔父や母の葬儀では、バッチり教訓が 生かされたのは言うまでもありません。 ]]>

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