正確にいうと二度目で、最初は小さいときに連れて いかれ、退屈で飽きまくったことだけ覚えています。 私の祖母が好きでよく姉を連れて行っていましたが、 私は歌舞伎=退屈というトラウマになり、この歳に なっても行く気がしませんでした。 今回いい席のチケットをいただいたことと、歌舞伎 座を取り壊す前の最後の公演ということで、家内に 強く誘われ、しぶしぶ行くことにしました。 地下鉄日比谷線の東銀座駅で降りると、たくさん のお年寄りがみな同じ方向にゾロゾロ歩いていき ます。その一団に混じり、一緒に出口の階段を上 がると、そこは歌舞伎座のまん前。 歌舞伎座といえば、昔私の祖父が16代を襲名し たとき、お得意様をお呼びして襲名披露をしたと聞 いています(歌舞伎役者じゃありません)。 当時ホテルのホールなどが少なかったので、ちょう どよい広さだったのかもしれません。 家内とおち合い、席につくと前から9列目。歌舞伎 座でいい席はト・チ・りというそうで、イロハの順番 でいうと7・8・9番目になります。そのよさは、舞台 が始まってからわかりました。 私たちの席の近くで珍風景が。お客さん同士が席 をめぐってもめてました。同じ席番号のチケットが 2枚あるはずもなく必ずどちらかの勘違いなのです が、二組の顛末を聞いていたら・・・ なんと、もう一組のチケットは夜の部。間違えるに もほどがありますが、この人ももらったチケットだっ たのでしょうか? 開演までまだ時間があるので、館内を探索。おどろ いたのは売店と食堂の多さ。たぶん老舗なのでしょ うが、狭い所にごちゃごちゃと沢山のお店が並んで ました。食べることが好きだった祖母は、観劇以上 にここの食堂でお昼を食べるのを楽しみにしていた そうです。 私たち初心者は席でお弁当 舞台が始まると、その席は舞台から近くもなく、遠 くも無く、ちょうどよい位置。 広い劇場では、遠く離れた席だと双眼鏡でもなけ れば人の顔など見えませんが、その点ここは役者 を近くで見れて、顔の表情などもよくわかりました。 演目は、お城のお家騒動を描いた伽羅先代萩(めい ぼく・せんだいはぎ)。私でも知っている染五郎や玉 三郎、橋之助などの有名歌舞伎役者が勢揃いする 豪華版ですが、独特の化粧(隈取り)なので、説明 を聞かないと誰が誰だかわかりません。 事前にガイドのイヤホーンを借りておいたので、役 者の名前も話しの内容もよくわかりました。以前、 イタリアオペラを見に行った時も、ガイドのイヤホーン があって助かりました。難解な出し物には必需品 です。 この解説のタイミングが絶妙で、しかも2回解説者 が変わったので、てっきり生の解説と思っていまし た。ところが、友人の先輩がその解説をしていたそ うで、あれは録音テープを役者に合わせて流して いるとのこと。こんなとこも芸の深さを知りました。 結局、面白かったのかと聞かれれば、私は・・・で す。華やかさを見るのはよいのですが、5時間近い 長丁場で、さらにすべてがスロー。私は何回か寝 てしまいました。正直3倍速で見たい感じです。 初めからずっと寝ていたお年よりがいて、家内に 「高いチケットなのにもったいない」と言うと、「あれ があの人の幸せなのよ」と言われました。 いまの世界の動きが早すぎるのでしょうか? ]]>