いまから30年ほど前の話です。 大学時代の友人に浅草の薬局の息子がいて、よく 浅草に遊びに行きました。当時の浅草は高いビル もなく、古い町並みで江戸・下町という印象が残っ ていました。 三社祭りにも何回か行きましたが、ある時その友人 から、神輿を担いでみないかと誘われました。 本来、神輿の担ぎ手は町内に住んでいる人に限ら れ、町内ごとに決められたハッピを着ていないと担 げないとか(確か・・)。そのハッピをなんとか手に入 れられるとのことで、友人数人でお願いすることに しました。 宮出しの前日に友人宅におじゃまし、夜店などを 廻ったあと、当然酒盛りとなって(私は飲みません が)、寝たのは3時ごろでした。 翌日の朝、5時に彼のお母さんに起こされました。 「宮出しは見なくてもいいです・・・」と布団の中から 懇願するも却下されて、無理やり起こされハッピを 着させられました。 お母さんは早起きし、日本の朝食の見本みたいな 朝ごはんをちゃんと用意していておいてくれてました。 「やっぱり江戸っ子は違う」と感動したのを覚えてい ます。 軟弱な我々は、初めて着たハッピで外を歩くのが 気恥ずかしい思いでしたが、6時から始まった本社 の宮出しを見ていると、だんだん気分が高揚してき ました。 宮出しが終わると担ぎ手はみな町内に戻り、神輿 が来るのを待ちます。 到着予定時間をかなりオーバーしイライラしていると、 遠くの方から掛け声が聞こえ初め、近づくにつれて アドレナリンがどんどん分泌され、徐々に興奮が高 まってきます。 ところで、最近の掛け声はセイヤとかソイヤと言いま すが、元は「ワッショイ・ワッショイ」から来ているそう です(なんで?)。 いよいよ我々の担ぐ番になりましたが、当然我々は いいポジションには着かせてもらえません。 何十人もで担ぎ上げても神輿はとても重く、ずっしり と肩に食い込みました。 掛け声と共に歩き出すのですが、あっちにフラフラ、 こっちにフラフラ、なかなか前に進みません。 車なんか停まっていようものなら、ボコボコニされて しまうそうです。 担いだ時間は20分ぐらいだったと思いますが、肩は 腫れて皮がむけ、1週間ぐらいは痛みが治まりません でした。でも、いい思い出になりました。 ]]>