ある日の夜、電話がかかり私が出ました. すると男の声で「僕だけど・・」と言います。息子の声 のようでしたが、兄弟みんな声が似ているので、「だ れ?」と聞くと「○○だけど・・」と、都内で1人暮らしを している次男の名前を言いました。 「今度携帯の番号が変わったから」と、新しい携帯番 号を言いました。その時ひどくセキをしながら、 「熱は ないけどセキがひどくて・・ 」とも。 具合が悪いなら、帰ってくるか早く医者に行けと言うと、 明日医者に行くと言って電話を切りました。 あとで家内にその話しをすると、次男の身体のことを 心配していました。 その3日後、家内から私に電話があり、オロオロしな がら「次男が先物取引に失敗して大変なことになって いるらしい。」と言うのです。 私が次男に間違いないのかと聞くと、確かに先日変 わった携帯番号からかかってきたと言いました。 それを聞いて私はピンときました。 つい先日見たニュースで、携帯の番号が変わったと 教え、後日その番号から電話して信用させる新しい 振り込め詐欺の手口を紹介していたからです。 私が、それは詐欺だと笑い飛ばしても、動揺してい る家内はなかなかのみ込めない様子。やはりひどい セキをしていて、次男がかわいそうと言います。 私は、とにかく相手にするなと言い、次男の古い電 話番号にかけてみました。電話が鳴っても次男は出 ませんでしたが、変えた携帯が鳴ること自体おかし な話。 家に帰ると、何度も次男の古い番号にかけて、やっ と連絡がついたそうで、家内も安心していました。 詳しく話しを聞くと、ニセ次男が言うには、高校の先 輩の紹介で先物取引を初め、200万ほど穴を開け たとのこと。ここで家内は、額に汗して働かずして儲 けようとするからだと20分ぐらい説教したそうで、こ れにはサギ男君も予想外だったことでしょう。 家内は人生勉強のつもりであきらめろと言ったそう ですが、敵もさる者。普通の人ではよく理解できない 先物取引の話しをし、いまお金を振り込めば来週に は倍になって助かるけれど、振り込まないと400万 の損になると言ったそうです。 ここで巧妙なのは、まだお金を振り込んでくれとは 言わないこと。 「いまサラ金の前にいて入るところだから、お金を借 りる時に電話をするので、相手に息子であることを 証明してくれ」と言ったそうです。たぶんそこで第二 の人物が出て、うまいことを言って本題に入るので しょう。 そこまで話しを聞いて、家内が「まるで振り込めサギ みたい。」というと、「こっちは必死なのにふざけない でくれ。」と怒られ、思わず「ゴメン。」と謝ったそうです。 ここまで家内は100%信じていました。 次男は昔から目端が利いたので、何か利殖をやって いても不思議ではないと思ったこと。名前と出身校を 言ったこと。そして何より声が似ていたことです。 しかし、彼は最後にミスを犯しました。 思いあぐねた家内が、私と相談するから早まらずに 待ってと言うと、「父さんには言わないで」と言ったの です。うちの子供らは、父さんさんなどと品のいい呼 び方はせず、みんなオヤジと呼ぶのです。 ここで家内もおかしいと思ったそうですが、ひどいセ キをしながら困っている息子がかわいそうで、とても 偽者とは思えなかったそうです。 あとで考えれば、いろいろおかしなことはいくつもあ りますが、考える暇を与えないのが成功の秘訣なの でしょう。 最近の振り込めサギは、名前や出身校などある程 度相手の情報を知っているので、ついだまされてし まうことも多いそうです。たぶん、次男の学校の同 窓会名簿でも見たのでしょう。 それにしても、偶然でしょうが声が次男とそっくりで、 私もわかりませんでした。家内は30分近くもしゃべ ったのにわからなかったことがショックのようでした。 いや、もしかしたら息子本人の狂言・・・? ]]>