納骨式と祖母のいいなずけ

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そこの家には、むかし宇津家から嫁いだ人がいたり、祖母 のいいなずけだった人がいました。「だった」というのは、 祖母とは結婚できなかったからです(祖母は宇津家の長女 で、祖父は養子でした)。 私が聞いた話では、祖母が結婚式の花嫁衣装の打合せ に行ってるとき、その婚約者は交通事故で亡くなっとのこ とでした。悲劇のドラマのような話ですが、後で聞いた話 では、亡くなった原因は盲腸だったとか(おたふく風邪だ ったという説もあります)。劇的な話に変えたのは誰? とまあ、そんな話はともかく、当日納骨式に伺いましたが、 住所を知らなかったので、電話で聞いて行きました。 するとそこは、なんとお祭りの打合せで何度も訪問してい る保育園の真ん前でした。広い庭に何台もソーラーパネル が設置してあって、前を通るたびに凄いなあと思ってまし た。 訪問するとすでにご親戚の方々がお集まりになられてまし たが、私が知っているのは息子さんとお母様だけ。親戚の 方と何の話をして間を持たせようかと思ってましたが、 1人のお年寄りがずっと戦争体験の話をされてたので助か りました。 時間になり、敷地内の墓地に移動。 お墓の前に祭壇はありますが、なぜかお坊さんの姿があり ません。喪主が挨拶の中で「故人が生前、葬儀は僧侶も戒 名もいらないと言っていたので」とおっしゃってました。 墓石を見ると、なるほど実名が書いてあります。高い葬儀 費用を思うと遺族への思いやりかもしれません。 全員お焼香が終わると、一人一人の紹介をされました。 その中に、私と姉が小さいころ、一緒に遊んだという方も いらっしゃいました。そう言われると、そんな記憶もよみ がえってきました。 納骨式が終わると、息子さんがむかしのアルバムを見せて くれました。その中の1枚の集合写真に、子供の頃の祖母 が写っていて、そばにいる男の子がいいなずけだと教えて くれました。子供の頃から結婚が決まっていたようです。 祖母は私に、「救命丸のパッケージの子供のマークは私」 と言ってましたが、着物を着た祖母はとってもかわいく、 何となくそんな雰囲気でした。 祖母はこの撮られた写真のあと、いろんな辛い体験をして きましたが、決して後ろを振り返らない前向きの人でした。 でも、小さい頃から結婚を約束した人が亡くなったときは、 さぞ悲しかったことでしょう。たとえおたふくかぜで亡く なったとしても・・・ 温厚でやさしかった祖母。母は一度も怒られたり意地悪を されたことがなかったそうです。だから母も、私の家内に はやさしくしてました。家内も、もし嫁が来たらそうする と言ってます。これは荷の連鎖ですね。 1枚の写真から、そんなやさしかった祖母を思い出しました。 ]]>

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